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第151回国会 衆議院 本会議 第36号 2001年06月07日
土地収用法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。大谷信盛君。
〔大谷信盛君登壇〕
○大谷信盛君 民主党の大谷信盛でございます。
民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました土地収用法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきたく思います。(拍手) まず、国土交通大臣にお伺いをさせていただきます。
最初に、今回の改正の目的について、しっかりと目的を確認させていただきたいというふうに思います。
今の法案の提案理由の中では、例えば、住民参加、円滑化、効率化、そして、何よりも大切な環境についての提案がございました。私、これは、キーワードを並べるというだけではなくして、言い方を変えるならば、新しい時代がやってきた、今までの公共事業ではなく、私たちの国民生活を真に豊かにするために、ど うしてもこれから改正は必要なのだということでいいのかというふうに思います。もし、そういう目的だとする ならば、我が国の次世代の公共事業のあり方について議論していかなければいけないというふうに思いま す。
最初の課題といたしまして、事業の構想、計画段階から住民参加が必要だということが指摘されるという ふうに思います。どうして住民参加が必要かというと、今日の厳しい財政事情、環境への配慮、そして個人 個人の価値観の違いなどによって、行政のひとりよがりの公共事業計画では、国民生活を必ずしも豊かに できなくなってきているからだというふうに思います。(拍手) 一坪運動、そして立ち木トラスト運動など、住民による事業の反対運動の増加傾向は、行政のみによる公 共事業の限界をあらわしていると言っていいのではないでしょうか。二十一世紀に国民生活を豊かにし、地 域の潜在能力を高める社会資本整備には、関係住民を構想段階から事業決定に巻き込むことによって、住 民合意をつくっていくシステムがどうしても必要になってくるというふうに思います。
かつて、住民の反対によって公共事業が円滑に実施できない状況に陥った経験のあるフランスやドイツな どでは、住民との合意形成を目的とした制度づくりに懸命に取り組んでいます。
例えばフランスでは、一九九二年のビアンコ通達というものによって、計画に先立ち、国民の意向調査を 目的とした、住民参加による討論委員会の開催が義務づけられています。対象は、国の一定規模以上の 高速鉄道路線、高速道路でありますが、その他のインフラ整備にも適用範囲を広げることができるのだそう です。
ドイツにおきましては、道路建設における住民の合意形成プロセスが、行政手続法という法律によって、し っかりと定められています。事業の計画段階においての説明責任、そして住民からの意見や質問に対して は、一カ月以内に、起業者、すなわち行政が何らかの形で応答をしていかなければならないというふうに定 められているのだそうです。
日本では法律に定められたものはございませんが、例えば、岩手県の国道四号盛岡北道路や島根県の 玉湯町の国道九号線のバイパス建設など全国数十カ所で、旧建設省が住民合意の実験的試みをしている というふうに聞いています。また、二〇〇〇年三月には、広域道路を対象に、旧建設省が、住民と話し合い ながら道づくりを進めていく、そんな実施指針案というものをまとめたとも聞いております。政府も住民合意を 尊重する方向に向かっているということを知って、少し安心をしております。
また、今、経済財政諮問会議で検討している公共投資基本計画が将来見直されることになれば、要する に予算が少なくなるならば、厳しい財政状況の中、住民合意を得ながら公共事業計画に優先順位をつけて いくことが、どうしても必要になってくるというふうに思うのです。
この際、今回の改正論議を好機に、総理、そして扇国土交通大臣のリーダーシップで、事業の構想段階 からの住民参加、住民合意を形成できるような、そんな制度づくりを一気に進める意欲がおありでしょうか。
ぜひとも、思いを、志をお聞かせいただきたいというふうに思います。
もう一つ、公共事業改革として、五カ年計画や長期計画の根拠となっている需要予測というものについて お尋ねをしたいというふうに思います。
道路や港湾、空港の需要予測は、一体どうやって計算しているのですか。最近では、下方修正がやたら と目立つのではないでしょうか。どうも、GDPの伸び率を主な根拠にし過ぎているようなことが原因ではない かというふうに思うのです。国際化、成熟化してきた我が国の経済では、必ずしも高度経済成長時代と同じ 相関関係で道路や空港の利用者を正確に割り出すことができるとは、決して思いません。
民間のシンクタンクが、企業会計に基づいた分析をしました。道路や空港は特定財源で整備しても、利用 者が増加せず、整備が飽和状態にあるというような報告をきのうの新聞で読みました。
これからは、もっと、自動車の使われ方や航空会社の将来戦略など、多方面、多角度から需要予測をし ていくべきだというふうに思います。その上で、二年に一度ぐらいの割合で需要見通しをチェックすべきで す。予想を大きく下回るような場合は長期計画を再修正する制度を持つことで、公共事業の効率性を高める ことができるというふうに考えます。長期計画が事業を続けるための理由になっていてはいけないのです。
この辺のことについて、将来展望に向けた大臣の所見をお伺いしたいというふうに思います。
次に、収用法の事業認定の透明化について質問をさせていただきます。
改正案では、事業の公益性を判断するために、事前説明会、そして公聴会の開催を義務づけています。
また、第三者機関の意見聴取ができるというふうになっています。フランスやドイツのように、住民意見を尊 重しようと努力しているものと、私は善意を持って受けとめさせていただいております。
しかしながら、実際の運用面では、事業認定の公正さや中立さを確保しているとは言いがたいのではな いでしょうか。公聴会で住民は意見を言うだけ、アリバイ的な意見聴取で終わってしまう可能性大でありま す。また、第三者機関からの意見は、都合のよいものは強調、都合の悪いものは無視というようなことにな る可能性だって十分考えられます。意見に対して何らかの制度的な拘束力というものを与えるべきだという ふうに思いますが、大臣は、この辺、どのようにお考えでございましょうか。
また、第三者機関の運営というものについても、委員が中立公正を保つために、何か今の段階から工夫を しての提案ということなのでしょうか。その辺のことについて、ぜひともお聞かせいただきたいと思います。
さらに、もっと認定の公正と中立性を大きく損なっているのは、事業の申請者と事業の認定者が同一人物 であるということが生じることです。これは、受験生が自分でテスト問題をつくって、自分でテストを受けて、 それでもって自分で採点までしてしまうというようなものです。本人が幾ら正直に、そして公正に判断したと しても、外から見れば、どうしても認定結果にうさん臭さがつきまとうのではないかというふうに思います。こ れでは、国民からの信用は決して得られないというふうに思います。この点について、しっかりと大臣の御 答弁をいただきたく思います。
私見を簡単に述べさせていただきますと、事業認定者は、国土交通大臣や都道府県知事ではなく、第三 者機関であってこそ中立な判断ができるのではないかというふうに思います。もちろん、第三者機関の運営 いかんによっては中立性を損なってしまうこともあるのかというふうに思いますが、第三者機関の委員の選 定は、だからこそ議会の承認事項とし、そのメンバーは、有識者や専門家をもって構成する、公聴会の開催 はもちろんのこと、他の参考意見として民意調査を当該市町村、都道府県まで広げて行うことができるよう にする、認定過程の情報公開を徹底するなどの認定制度があってこそ初めて、公正中立というものが保た れていくのではないかというふうに思います。ぜひとも、この辺についてコメントをいただけたらというふうに 思います。
また、事業認定の公益性の判断要件四点は、今回の改正においてもそのままになっていますが、これは 昭和二十四年、すなわち五十年前、半世紀前から内容が変わっていません。五十年前に比べたら、時代 は全然違います。今の時代に合わせて内容をアップデートすることはもちろんのこと、もう少しいろいろなキ ーワードを明確化して述べていってもいいのではないでしょうか。循環型社会の形成を目指すのであれば、 環境への影響という単語、また、事業の効率性を問うというのであれば、代替案との比較をするというような ことをしっかりと明記しておくべきだというふうに考えますが、どんなお考えでこうなったのか、ぜひともお聞 かせいただきたいというふうに思います。
次に、収用手続の合理化について質問をいたします。
今回の改正では、収用手続に必要な土地物件調書作成において、土地所有者が百名以上、なおかつ、 一人当たりの補償金見積額が一万円以下の場合は、おのおのの土地所有者から直接会って署名押印を 受けずとも、市町村長による公告縦覧の手続を経て調書を作成できるというふうになっています。
しかし、額の大きい小さいによって、所有権の移動という基本的な権利に対応の差があっていいものなの でしょうか。この辺、今回の特例措置の合理性についての御説明をいただきたいというふうに思います。
次に、法務大臣に、司法と公共事業の関係について御質問をさせていただきたく思います。
事業認定の結果に納得できない住民が最後に事業の公益性について争える場は、司法の場しかありま せん。しかしながら、現在の行政事件訴訟法では執行不停止の原則というものがとられていて、裁判所が 事業を停止する判断をとるとはなかなか考えられません。すなわち、裁判中でも、対象となる事業は完成に 向けてどんどんと進んでいきます。裁判では、完成直前の事業の公益性を判断するという、意味のない判 断になってしまいます。また、仮に、裁判所が事業停止の判断をしたとしても、総理大臣の異議によってこ の判断を覆すことができるのだそうです。
これでは、何か司法制度が行政に侵害されていると言っても過言ではないように思います。住民を軸に し、そして、真に国民生活を豊かにできる公共事業を実現するためには、行政事件訴訟法の執行不停止の 原則というものを、今、改めて検討していく時期に来ているというふうに思いますが、法務大臣はどのように 考えるか、お聞かせいただけたらというふうに思います。
最後に、今回の土地収用法の改正方向には、情報公開、住民参加、環境への配慮、そして事業効果の 観点など、二十一世紀の公共事業のあるべき姿に変えていこうという努力が感じられると思います。しかし ながら、改正案では、事業が進み始め、反対運動などの問題が生じてから住民の合意形成に乗り出してい くという、今までと全く同じパターンで、何の変化もございません。今、求められているのは、反対運動が起 こる前に住民参加ができる仕組みが求められているのです。
今回の法案の審議を通じて将来の公共事業のあるべき姿に近づくよう、小泉総理、そして扇千景国土交 通大臣の強いリーダーシップと前向きな姿勢に期待をいたしまして、私からの質問を終わりたいというふう に思います。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣扇千景君登壇〕
○国務大臣(扇千景君) 大谷先生の御質問にお答えしたいと思います。
今回の土地収用法の目的について、まずお尋ねがございました。幾つか例示を挙げられましたけれども、 順次お答え申し上げたいと存じます。
今日の社会情勢の変化によりまして、公共事業に対する住民の理解の促進、円滑かつ効率的な実施の 確保、循環型社会の形成の促進など、さまざまな課題への対応が求められているのは、今先生御指摘の とおりでございます。これらの課題に適切に対応するためにも、土地収用法を改正して、そして、事業認定 手続の透明性等の向上、収用裁決関連手続の合理化を図る必要があるのは、先生も御指摘のとおりでご ざいます。
その意味で、今回の法案は、国民の理解を得つつ、真に必要な事業を速やかに実施することにより、国 民の生活の向上を図るものとなると考えております。
事業の計画構想段階からの住民参加、住民の合意の伴う制度づくりについて御質問がございました。
おっしゃるとおりでございまして、公共事業の実施に当たりましては、住民の理解と協力を得るとともに、 透明性を確保することが、先生のおっしゃるように、重要なことであると私も考えております。
現在におきましても、河川整備計画の策定に際しましての地域住民の意見の反映、都市計画決定におけ る住民の意見の反映、また、道路計画について、地域住民等関係者の意見を聴取しまして計画に反映す るパブリックインボルブメントの方式を試行するなど、あらゆる計画段階での住民参加の手続は、積極的に 導入し、また、努力しているところでございます。
今後とも、先生がおっしゃるように、できるだけ早い段階からの情報公開、住民参加、それを私たちは積極 的に取り入れていきたいと思っておりますので、ぜひ御協力も賜りたいと存じます。
道路あるいは港湾、空港の長期計画の需要予測についてのお尋ねがございました。
御存じのとおり、道路、港湾、空港の長期計画につきましては、それぞれの特性に応じて、GDPの見通 し、人口推計、国内外の経済社会動向に基づきまして多角的な分析を行って、需要を予測しております。
また、これらの長期計画は、計画的な事業実施のためのいわば目安といった性格のものでもございます けれども、個々の事業の実施に当たっては、それぞれの詳細な需要予測を行って、費用の対効果分析を行 っております。また、毎年度の予算執行に当たりましても、その時々におきます経済社会動向、財政事情 等を踏まえまして弾力的な事業の実施を図っておりますけれども、今先生がおっしゃいましたように、ある程 度検査、あるいはその年数を短くしろという御指摘でございましたので、評価制度の導入ということもこれは 必ず必要である、今の時世に沿ったものだと思っております。
公聴会におきます意見聴取の取り扱いについて、先生からの御質問がございました。
公聴会で陳述されました意見は、第三者機関の意見の取りまとめに当たりまして、参考資料として提供 することも考えておりますし、また、実施もしております。
また、今回の法案によりまして明らかにすることにいたしておりますけれども、事業認定の理由におきまし ても、その意見がどのように反映されたかについては、できるだけ明らかにしてまいりたいと考えておりま す。
第三者機関の意見に対する取り扱いについて、大谷先生の御質問がございました。
今回の法案は、事業認定に当たりまして、事案によって中立的な第三者機関から幅広い意見を聞くこと が有用であるというのは当然のことでございますし、また、その意見の聴取を義務づけることとするものでご ざいます。
このような今回の義務づけの趣旨にかんがみまして、事業認定庁は、当然、第三者機関からの意見を尊 重いたしまして事業認定の判断をすることにより、結果として一定の拘束力を有するというのは考えられま すことから、今回の提案しました法案においては、制度的な拘束までは規定していないというところでござ います。
先生から、第三者機関の委員の構成のあり方を御質問されました。
社会資本整備審議会のうち、土地収用法の事業認定の審議にかかわる委員につきましては、特定の分 野に偏ることなく、法学界あるいは法曹界、都市計画、環境など、各界からバランスよく人選するなど、その 中立性、公正性の確保に最大の配慮を払ってまいる所存でございます。
次に、事業認定庁と事業主体が同一の者となることについての御質問がございました。
国土交通大臣が事業認定を行うことについては、先生がおっしゃいましたけれども、事業認定の判断に は、事業に関する技術的、専門的な知見が必要であることは言うまでもございません。事業認定の中立性 等を担保するための新たな措置として、第三者機関であります社会資本整備審議会の意見聴取でござい ますとか、公聴会の開催、事業認定理由の公表の義務づけを措置することといたしております。諸外国にお いての事例もありますけれども、細かいことは委員会に譲ることといたしまして、事業所管大臣が事業認定 を実施することが通例であるというのは諸外国でも一般化しておりますし、その意味でも、その公正性や中 立性は担保されているものと考えております。
公正中立が保たれる事業認定制度についてのお尋ねがございました。
今回の法案においては、事前説明会、公聴会の開催の義務づけによりまして、住民の意見の把握に努め ることとしております。公正中立な第三者機関の意見聴取、事業認定の理由の公表による情報公開の徹 底を行ってまいりたい、そのとおり考えております。
また、事業認定におきます環境への影響、代替案の比較といった事業認定要件の見直しについてのお尋 ねがございました。
現行法におきましても、事業の実施により生じます環境への影響は、事業認定に関する公益性の判断に おきまして考慮しているものでございます。また、事業認定の公益性の判断に際しては、代替案が考えら れる場合、事業の効率性については、申請案との比較検討を行ってきたところでございます。
そして、土地調書等の特例手続を補償額が些少の場合に設けることについての御指摘もございました。
収用手続は、公共の利益の増進と私有財産権の保護とを適切に調整するためのものであり、その具体的 な内容は、実施する事業と収用される権利の性質及び内容等を踏まえて定める必要があるのは、先生御 指摘のとおりでございます。
そういう意味で、今回の法案は、土地所有者が百人を超え、一人当たりの補償金額が些少である場合に ついて、収用される権利の内容に着目いたしまして、公告縦覧等の方式によります手続の採用という特例 を置くものでございまして、合理的な理由があると考えております。
以上、大谷議員の御質問にお答えさせていただきました。あとは、また委員会で御質問をいただきます。
(拍手)
〔国務大臣森山眞弓君登壇〕
○国務大臣(森山眞弓君) 大谷議員にお答え申し上げます。
行政事件訴訟法の執行不停止の原則等を見直すべきであるとのお尋ねがございました。
行政事件訴訟法は、一つの行政処分がなされた場合、これを前提として新たな行政行為が積み重ねられ ていくことが少なくないこと等にかんがみ、行政の円滑な運営が阻害されることを防止する等の観点から、 行政処分について抗告訴訟が提起されても当然にはその処分の執行等を停止しないものとする、執行不 停止の原則を採用しております。
しかしながら、その一方で、行政事件訴訟法は、行政処分の執行等により回復の困難な損害を避けるた めに緊急の必要があるときには、裁判所は、原告の申し立てによりその執行等を停止することができるもの としております。
この執行停止は、本案の訴訟における終局判決とは異なり、判決前の暫定措置として、行政処分の執行 等により回復の困難な損害を避けるために緊急の必要があるときに行政処分の執行等を停止するものであ り、いわば行政作用に属する事柄であります。行政事件訴訟法は、このような行政作用に属する執行停止 の許否の判断を、立法政策上、裁判所にゆだねたものでありますから、内閣総理大臣の異議の制度は、司 法権を侵害するものではないと考えております。
なお、御指摘の執行不停止の原則も含め、司法の行政に対するチェック機能のあり方については、司法 制度改革審議会において調査審議の対象とされており、六月十二日に取りまとめられることが予定されて おります同審議会の意見を踏まえまして、今後、司法及び行政の役割、さらには、均衡のとれた三権相互 の関係のあり方等を十分吟味した上で、総合的、多角的な検討が進められていく必要があるものと考えて おります。(拍手)
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